【行動面の不注意】「気が散りやすい」を責めない。特性を理解したサポートとは?

はじめに
「宿題を始めても、すぐ他のことをし始めてしまう」
「授業中に何度も立ち歩いてしまう」
「『ちゃんとしなさい』と言っても、なかなか変わらない」
こんな様子が続くと、「このままで大丈夫なのか」「自分の関わり方はこれでいいのか」と、不安を感じる保護者の方も多いと思います。
ここでは、IROAIの授業で実際にあった Aさんの事例 をもとに、以下の項目について順を追って整理します。
- どのような行動が見られていたのか
- 環境をどう変えたのか
- その後、どのような変化があったのか
診断の有無を判断したり、「これをすれば必ずうまくいく」と示すものではありませんが、
行動面の不注意や「気が散りやすさ」が気になるお子さんへの関わり方を考える際のひとつの参考事例として読んでいただければと思います。
電車の音がするたびに席を立つAさんの例
IROAIの教室に、小学校低学年のAさんが通ってきていました。
Aさんは電車が好きで、校舎のそばを電車が通るたびに勉強の手が止まってしまうことがよくありました。
授業中に電車の音が聞こえると、
”いま電車が通ったかどうかが気になる” ”どの電車なのか確かめたくなる”
という気持ちが一気に高まり、席を立って窓の方まで見に行っていました。
1回の授業のなかで、こうした行動が何度かくり返されることもあり、そのたびに集中は途切れます。
Aさん本人は、勉強をしたくないわけではありません。
プリントに取り組もうとしますが、外からの音が入ってくると、注意がそちらに向かいやすい状態でした。
「気の散りやすさ」と行動面の不注意
Aさんのように、
周囲の音や動きにすぐ反応してしまう
宿題や作業を途中で放り出してしまう
話を最後まで聞く前に別のことを始めてしまう
といった様子は、医療や教育の分野では「行動面の不注意」と呼ばれる状態にあたります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)では、こうした傾向が目立つことがありますが、
診断の有無に関わらず、「気が散りやすい」「集中を続けにくい」お子さんは少なくありません。
ここで大事な点は、わざとふざけている・親のしつけが足りない、とは限らないということです。
もともとの脳の特性として「外からの刺激に注意が向きやすい」「ひとつのことに集中し続けるのが難しい」という状態があると、
本人の努力だけではコントロールしにくい場面が出てきます。
「やめさせる」より「条件を整える」視点
同じような場面では、電車の音が聞こえにくい部屋に移る・窓から離れた席に座る・「今は見に行かないよ」とくり返し伝える など、
一見すると次のような対応が効果的に見えます。
しかし、これらは「電車を見たい」という気持ちを我慢させる対応です。
そこでIROAIでは、電車を完全に遮るのではなく、「いつでも確認できる」と感じられるようにするという方向で調整しました。
席を「窓からよく見える位置」に変えた

具体的には、Aさんの席を窓側に変更しました。顔を上げれば、線路の方向が見える場所です。
- 電車の音が聞こえたとき → Aさんは少し顔を上げて外を確認する
- 電車が通ったことが分かると → 席に座ったまま、プリントに目を戻す
という流れが増えていきました。
完全に席を立たなくなったわけではありませんが、
- 窓まで走っていく回数が大きく減る
- 一度気がそれても、自分で課題に戻りやすくなる
という変化が見られました。
「いつでも見られる」と分かることで、「今行かなければ」という焦りが弱まり、行動が落ち着いたと考えられます。
この事例から分かるポイント
Aさんのケースから整理できるポイントは、次のようなものです。
性格や努力不足だけで説明しきれない場合があります。
座る位置を変える、見える・見えないを調整するなど、「まわりの条件」を整えることで、本人が動きやすくなるケースがあります。
大切なのは「気が散ったあと、自分で戻る経験」を少しずつ増やすことです。
経験を重ねることで育つ「自己調整力」

Aさんのように、気が散りやすさそのものをゼロにすることは、現実的には難しい場合もあります。
一方で、気が散ったあとにどう戻るかを何度か経験していくことで、「自分で切り替えられた」という感覚は少しずつ育っていきます。
席の位置を工夫することや、その時間に何をするか・そのあと何をするかを示すスケジュールカード、やることや終わりの目安を絵やアイコンで見せるなどの視覚的サポートなど、その子に合った環境やツールを用意することで、
「さっきより早く戻れた」「自分で席に戻れた」といった小さな成功が積み重ねやすくなります。
こうした経験の積み重ねが、将来につながる大切な力である”自己調整力”の土台になります。
行動面の不注意が気になるときこそ、「一度も途切れないこと」ではなく、「途切れても戻れた経験」を丁寧に見ていくことが大切です。
IROAIで行っていること
IROAIは、特性のある/あるかもしれないお子さんを対象にした、学習と生活面のサポートを行う教室です。
- 年長〜中学生を対象とした、1対1の授業
- お子さんの特性に合わせた教材や座席配置の工夫
- 定期的な保護者面談で、家庭や学校での困りごとを一緒に整理
といった形で、「行動面の不注意」「集中が続きにくい」といった相談も受けています。
Aさんのような事例では、以下のような手順で支援を進めていきます。

まとめ|気が散りやすさを「ダメなこと」だけで終わらせない
行動面の不注意や気が散りやすさは、日常生活や学習に影響が出ることもあり、保護者の不安につながりやすい部分です。
一方で以下のような側面もあります。
- 背景に特性が関係している場合がある
- 環境調整によって、行動が安定することがある
- 「気が散ったあと、どう戻るか」の経験を重ねることで、自己調整力が育つ
Aさんの例は、その一つの具体例です。
この体験談が、「うちの子も似ているところがあるかもしれない」「全部を“しつけ”だけで解決しようとしなくてよいかもしれない」と感じるきっかけになればと思います。
必要に応じて、学校・医療機関・支援教室など、外部の専門家と一緒に考えることで、不安が少し整理されることもあります。
ご家庭だけで抱え込まず、「どう関われば、お子さんが暮らしやすくなるか」を一緒に考えていくことが大切です。
